89
PAX + i = PAXi
Specialty Coffee, Craft Beer & SOTOCHIKU Showroom
パクチー銀行の正式名称である SOTOCHIKU & 89 unLtd. (そとちくあんどぱくあんりみてっど)に含まれる「89」は、「パク」と読みます。そこに「パクチー」と「PAX」(ラテン語で平和)という意味を込めています。
日本パクチー狂会をつくった後、パクチーの普及を促進するために「パクチーの日」を作るのがいいだろうと創業メンバーたちと話して、8月9日をその日に定めました。世界初のパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」を立ち上げようとしたとき、多くの専門家の方々から、知名度が低くて・好んで食べる人がほとんどいない・入手困難な・そんな草をメインに据えて飲食店を開くのは危なすぎる・間抜けすぎる・飲食業をナメていると揶揄されました。「パクチーなんかで店が成り立つわけがない」というのは、しかし、彼らの意見を聞かなくても、一般常識に照らし合わせれば分かることでした。パクチー普及活動を続け、ほぼ毎日パクチーのことを考えて数年過ごした僕は、彼らよりもそのことを意識していました。
それでもパクチーを普及させたいし、パクチー料理専門店で家族を養おうと思ったし、パクチーで人に希望を与えられると思ったし、何よりも常識を覆したいというのが、僕の起業の原点でした。パクチーの知名度は低いし、店に来た人は「一生分のパクチーを食べました」と言って帰るだろうと思っていました(実際その言葉を発した人は数え切れません)。パクチーは、非日常の食べ物だったのです。僕の最初の仕事は、パクチーを日常的なものにすることです。
パクチー銀行と称して、パクチーの種を渡すことは、その一歩でした。次に行なったのが、「89」という数字を「パクチー」と結びつけることです。2007年8月9日に会社を立ち上げ。資本金は890万円。アルバイトの時給は890円から始まり、メニューは890円やら1189円などなど。8時9分にはお客さん全員に呼びかけ、立ち上がらせ、大きな声でカンパクさせます。来店から89分が過ぎたころ、店内にいる人たちは「89」が特別な数字であることに気づきます。そして、その瞬間から、「89」という数字を見ると「パクチー」や「パクチーハウス」のことを思い出してしまうのです。
これにより多くのお客さんから「前を走っている車のナンバーが89でした」「銭湯に行ったのでロッカーはもちろん89番にしましたよ」「ずっと野球が好きですが、だからパクチーも好きなんだと気づきました」などと連絡をいただくようになりました。つまり、彼らの日常に「パクチー」が少しずつ入り込んだのです。
ちなみに、パクチー銀行では、パクチーのスペルを「paxi」と表記しています。日本パクチー狂会をつくるときに、さまざまある呼び名(パクチー・香菜・コリアンダー・シラントロ・・・)を日本ではもちろん、世界で統一しようという目標を立てました。「パクチー」はタイ語の発音から来ています。タイ語をアルファベット表記にすると「phakchi」と書きますが、ちょっと難しすぎると感じました。約2週間も、パクチーのスペルについて考えてできたのが「paxi」です。
pax + i = paxi
「 pax 」はラテン語で平和という意味です。「 i 」は人間のことですが、特に僕は旅人という意味合いを持たせました。旅人とは、自立しており自分の意志で生きる人のことだと定義しています。つまり、「 paxi 」というスペルに「旅と平和」という意味を込めました。「旅と平和」は僕が2002年に3度目のユーラシア大陸横断旅行をしているときに思いついた自分のテーマであり、パクチーハウスやパクチー銀行を運営する、僕の会社名でもあります。詳しくはこちらをどうぞ。
というわけで、「89」を見たら、パクチーと平和を思い出してくださいね。